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泉美木蘭
2016.2.21 03:40

高層タワーが売れる理由。富裕層のタワマン節税

朝焼けの空とタワーマンション。

36階建てらしいけど、手前の森がうまくかぶさって低く見せてくれるので、
そんなに嫌味に感じないという。
以前、知人が15階Overの部屋へ引越すので作業を手伝ったことがある
んだけど、一息ついて、みんなでベランダから街を見下ろし騒いでいたら、
知人が、暗ーい顔して手すりに体を寄せて真下を見ながら
「・・・こんな、いつでも自殺できる部屋に引越して、大丈夫かな・・・」
とつぶやいたのを、いまでもよく覚えています。
同棲解消して独り暮らしをはじめるタイミングだったのでした。
でもそんな高級な部屋に暮らせる人は、モテます。
全然大丈夫のようで、いまはパートナーの方と、もっと高層のタワーへ
引越されたのでした。

きのうのつづき。
鉄筋コンクリートの建物を作るのに必要な、鉄筋工や型枠職人が
不動産不況のあおりを受けて転職してしまい、人材不足となって
低層マンションの建築費が高騰、それなら広い土地を確保して、
超高層のタワーマンションを建てるほうがよい、という都心の状況。

新宿区、渋谷区、目黒区、港区、あと品川区も新幹線フィーバーで
高層タワーマンションがぼこぼこ建っている。
木造2階建てアパートで日々の地鳴りにドキドキしてる程度の私は、
よくこんなに値段の高いマンション売れるよなあ、都心ってそんなに
金持ちが終結していたのかあ、と圧倒されてしまうんですけど。

なぜそうも建てるかというと、売れるからで。
都心の高層タワーマンションは、お金持ちにとってはいま、注目の
アイテムなのだそう。
ステイタスとか、街を見下ろしながら暮らす優越感とか、いろいろ
聞くけれども、マンションを売る側が特に押しているのは、『節税』
相続税を大幅に節約することができるのだそう。

たとえば、相続税率が50%の方の場合、
2億5000万円を現金を持っていると、1億2500万円が相続税に。
そこで、2億5000万円の高層タワーマンションを買っておく。
すると、マンションは、買った値段よりも土地の専有面積で相続税の
評価額が決まるため、敷地面積だけを単純計算することになり、
評価額は5000万円程度に激減するらしい。
そうなると、相続税がかかるのは、5000万円の50%で=2500万円
これで、1億円も節税できるということに。

高層タワーマンションの場合、眺望の良さや日当たりなどが価値を
高めるので、高層階ほど値段が高くなるのだけれど、相続となると、
専有面積のみが評価対象になるので、1階でも50階でも同じ。
だから、なるべく高層階のマンションを買っておいたほうが、
評価額の落差が大きく、節税になるのだそうだ。
私からすれば、なんのこっちゃら、まったく関係ねーわ、という話だけど。

さらに、買ったマンションを賃貸しておくと、路線価格やらいろいろな
評価基準が加わってお得になるそうで、高層階のタワーマンションを、
自分の子供に賃貸する、というのが「富裕層あるある」になりつつあるとか。

ある高層タワーマンションのコマーシャル記事を読んでいたら、
2億のマンションを買って、36歳の息子夫婦に賃貸しているお父さんが、
「タワーマンションに住みたいという息子の夢もかなえてやれたし、
相続税もかなり節税することができるので、大満足です」
と語っていた。
富裕層の子は、富裕層・・・かあ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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